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column トピアコラム

樹を植える

2024年3月15日

家づくりの過程において『樹を植える』事の重要性を感じています。

 

お客様に「お庭に樹を植えましょう」と提案すれば、まずもっての反応が植栽後のメンテナンスに対する不安です。これはきっと不安を払拭するほどのわくわくするような提案や樹を植えることの意味をお客様に伝えきれていない事によるのかもしれません。

 

 

 

私たちが日々生活する中で、ふと山を眺めてみたり、部屋に生花を飾ったり、小さな観葉植物をデスクにおいてみたりするのは、人をリラックスさせるような心理的・生理的な癒しの効果が植物にあるからともいわれています。

 

また家の建つ敷地の中に樹を植える場合、眺めることによる心理的・生理的効果はもちろんのこと、ボリューム感による視線のコントロールや四季の移ろいを体現する媒体として『樹を植える』ことの効果は様々な生活シーンで想像することができます。

 

朝の食卓で、陽を浴びる葉にふと目がとまる

家に帰ってきたとき、アプローチの樹に咲いた花を見つける

揺れる枝や、陽光に輝く葉をみて天候を知る

雑多な風景を緩やかに遮断し、緑の葉で無用な視線をさえぎる

樹で家の佇まいが素敵にみえてくる

 

このように樹のある生活を想像することはできますし、見学会等で樹のある家の実体験をしてみて、あらためて樹を植えることの意味を認識される方も多くなってきました。

 

 

また最近、まさに樹を植える当日に施主様に現場に来て頂き、庭師(外構工事業者様)と私で樹をあちこちに移動し、回し、傾けたりしながら、施主様とともに窓越の眺めを確認したり、視線の抜けと遮断の度合いを確認したり、外に出て家との距離感や見栄えを確認しながら樹を植える機会がありました。

 

 

ライブ感覚で、みんなでワイワイ議論しながら、食卓と主寝室の窓越しに『常緑エゴノキ』と『イロハモミジ』を植え、リビングとベンチから臨む位置には『アオダモ』、アプローチには樹形の美しい『ヤマコウバシ』を配してお庭は完成しました。

 

 

 

建築の設計者も造園の庭師も、その職能として樹はこう植えるべきという明確な意思は持たなければならないのですが、それ以上に、これからそこに住まう住まいてが『樹を植える』という経験を経ることで、そこにこの樹を植えたことの意味を理解し、新たな生活の一員となる樹への愛着をもって日々の生活をおくっていけることが何よりも重要だと感じることのできる経験でした。

 

設計部 大橋