2017年2月18日
デンマークからようこそ
デンマークからようこそ。
とはいっても我が家にやってきたのは人ではなく、デンマーク生まれの家具。
鋳銭司にある北欧ヴィンテージ家具のお店に立ち寄った際に、 広い店舗の片隅にひっそりと置かれていたコーナーキャビネット。これを妻が見初めて、それでも三か月考えた末にようやく我が家にやってきました。
背丈は私よりも少し低く1.5mくらい、平面形状は二等辺三角形の底辺がゆるく弧を描いたような変わった形をしています。背板の裏側にはSkovmand & Andersen(スコブマント&アンダーセン社)の刻印があり、ミッドセンチュリー期(1950~1960年代くらい)にデンマークで製作されたものとのことでした。
チーク材を使用した躯体は、正面から見ると上下二つの収納エリアに分かれており、それぞれに蓋が付いています。蓋には木製のツマミがついているのですが、開き戸ではなく、ましてや引戸では引き代もなく、お店で初めて見た時は、一瞬開け方が分からずに戸惑ってしまいました。
触ってみて、蓋の裏側を見てようやく理解できたのですが、一枚板に見えたチークの蓋は約10㎜ピッチに細長くスライスされており、裏側からフェルト生地で留めつけることによって簾状に一体化されていました。この簾状の蓋を左方向に引くと、蓋が円弧に沿ってスライドし、背板の裏に隠された戸袋の中に収納される仕組みになっています。
「見立て」という言葉
ところで…お茶において「見立て」という言葉は、「物を本来のあるべき姿ではなく、別の物として見る」という意味で使われます。もともとグラスや酒瓶を収納していたと思われるこのキャビネットは、妻の「見立て」により、テレビ台(!?)として使われることになりました。『テレビは見たいけど見ない時にはテレビを隠せるテレビ台』として見立てられてしまったようです。
仕事上、住宅設計の一環としてテレビ台を計画することもありますが、テレビを隠せるテレビ台は提案したことも、依頼を受けたこともなかったので『なるほどねぇ』と感心しつつ、古くて新しい家具を眺めながら生活する今日この頃です。
設計部 大橋